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TOP &GROWアカデミー コラム 「欲しい人材」は定義から始まる— ペルソナ × 期待役割 × 評価基準の三点設計

「欲しい人材」は定義から始まる— ペルソナ × 期待役割 × 評価基準の三点設計

2025.10.16

採用の成功は、募集段階における定義の精度に依存します。

本稿は、経営者および人事責任者が明日から実践できるフレームワークとして、ペルソナ設計(Must/Plus/Anti)期待役割の言語化(What/Scope/How/Timeline)、および評価基準の標準化(必須・加点・減点 × SBI+課題)を統合する方法を提示します。

採用の失敗は“曖昧な定義”から生まれる

「経験豊富で自走できる人がほしい」「カルチャーフィットする人を採りたい」――多くの企業がこのような言葉を掲げて採用に臨みます。しかし、これらの表現が曖昧なままでは、面接官や現場と人事の間で期待が食い違い、採用後に「期待と実際が違った」といった問題が生じます。

採用の失敗を防ぐためには、募集段階で「誰を、何のために、どう見極めるか」を明確にしておくことが不可欠です。具体的には、以下の三点を同時に設計します。

ペルソナ(どんな人) × 期待役割(何を成す) × 評価基準(どう測る)

この三点を一枚のスコアカードに統合して運用することで、採用の再現性と入社後の立ち上がり速度を高めることができます。

ペルソナ設計のポイント:Must/Plus/Antiの三階層で定義する

意義と設計方法

ペルソナ設計は「どのような人物像が組織で機能するか」を示す作業です。ここで推奨するのは、Must(必須)/Plus(加点)/Anti(除外)の三層で要件を整理する方法です。

各階層の説明

  • Must(必須):職務遂行に不可欠な条件。

例:関連領域での実務経験、主要ツールの運用スキル。

  • Plus(加点):早期に組織へ貢献するための強み。

例:近接業界の理解、データ分析の素地。

  • Anti(除外):自社の運用や文化で機能しにくい特性。

例:協働を回避しがちな個人最適志向。

情報源と実践例

精度の高いペルソナを作るには、次の3つの情報を参照します。

  1. トップパフォーマーの行動特性
  2. 離職者の振り返り(離職理由と行動パターン)
  3. 顧客の期待や要求

例示書き方:

  • Must: SaaS営業経験2年以上、見積〜契約まで自走できる
  • Plus: B2B新規開拓の成功体験/CRM運用
  • Anti: 数値の振り返りを言語化できない

求人票の「歓迎要件」をMust/Plus/Antiに再整理し、各項目に「なぜ必要か」を1行追記することにより、選考基準に関する共通理解が生まれます。

期待役割の明確化:成果の約束として定義する

成果を中心に設計する理由

業務の羅列ではなく、当該ポジションが達成すべき成果(What)を軸に定義することで、候補者・採用側・現場の認識を一致させることができます。期待役割は、以下の4項目で構造化します。

What/Scope/How/Timeline

  • What(成果):最終的に達成すべきKGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)や目標値(例:90日で顧客継続率+5ポイント)
  • Scope(責任範囲):担当領域、決裁権限、関係者とのインターフェース
  • How(重要行動):週次レビュー、関係部門との合意形成など、再現可能な行動パターン
  • Timeline(到達目安):30日、60日、90日といったマイルストーン

30-60-90日ロードマップ(例)

  • 30日:主要顧客10社を同席、現状課題を整理し文書化する
  • 60日:仮説KPIを設定・検証、改善提案を現場と合意する
  • 90日:提案を実装し、KPIを+5ポイント改善。再現手順をドキュメント化する

実践の第一歩:募集ポジションごとに1ページの90日ロードマップを作成し、面接前に現場責任者と合意を取ること。

評価基準の標準化:印象ではなく事実で判断する

評価の基本構造

面接官の印象に左右されない評価プロセスを設計するために、評価は必須・加点・減点の三層に整理します。これらをSBI質問および課題選考で裏取りすることで、判断の再現性が高まります。

SBI質問法(Situation / Behavior / Impact)

SBIは、候補者の行動の再現性を評価するための有効な手法です。

「直近の売上低迷に際して、どのような状況で、どのような行動を取り、どのような影響がありましたか?」

この問いにより、候補者が取った具体的行動と、その結果がどの程度再現可能であるかを判断できます。

課題選考の実施例

  • ロールプレイ(顧客対応、営業トークなど)
  • 簡易的な分析資料の作成・持ち帰り提出(24時間)

採点方法と運用

各評価項目は5段階評価に重み付けを行い、必須項目は合否の分岐基準とします。加点は優先順位付けに、減点は早期リスクの兆候として扱います。さらに、面接官による採点コメントは必ずSBI形式で記述することを運用ルールとしてください。

実践の第一歩:面接台本を「必須1問・加点1問・SBI3問」で統一し、評価シートを面接官全員に共有すること。

三点を一本化する「役割スコアカード」

目的と効果

ペルソナ、期待役割、評価基準を別々に管理している組織では、プロセス間の齟齬が生じやすくなります。役割スコアカードはこれら三点を一枚にまとめることで、採用からオンボーディング、評価までを一貫した尺度で運用できるようにするツールです。

カードの構成(推奨)

  1. KGI/期限
  2. 主要KPI
  3. Must/Plus/Anti(ペルソナ要件)
  4. 期待行動(How)
  5. 関係者(ステークホルダー)
  6. 30-60-90日ロードマップ
  7. 支援資源(ツール・教育・担当者)

運用の具体例

各フェーズでの活用イメージは以下の通りです。

  • 募集段階:求人票にカード要約を掲載し、候補者の期待値を揃える
  • 選考段階:カードを起点に質問・課題を実施し、面接のブレを減らす
  • 入社後:1on1でカード進捗を確認し、ダッシュボードへ反映する

採用時に交わした「期待値」と入社後に確認する「実績」を同一のフォーマットで管理することにより、評価の整合性が高まります。

実践の第一歩:今期の重点ポジションから試験導入し、求人広報・選考・オンボーディング各プロセスへ実装してください。

定義が揃えば、採用は再現可能になる

要点を改めて整理します。

  • ペルソナ:Must/Plus/Antiで「合う・合わない」を明確化する
  • 期待役割:What/Scope/How/Timelineで成果の約束を言語化する
  • 評価基準:必須・加点・減点 × SBI+課題で事実ベースに評価する
  • 運用:役割スコアカードで採用→オンボ→評価を一本化する

明日から実践できる4ステップ

  1. 求人票をMust/Plus/Antiの三階層に再設計する
  2. 90日ロードマップを1ページで作成する
  3. 面接台本と採点表を標準化する
  4. 役割スコアカードを軸にダッシュボード運用を開始する

派手な施策ではありませんが、「同じ前提・同じ指標・同じ言葉」が揃ったとき、採用のミスマッチは確実に減少し、入社後の立ち上がりは大幅に改善します。読了後の最初の1時間で、まずは求人票と面接台本の更新に着手してください。その小さな一歩が、採用の再現性を高める重要な起点となります。

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