2025.12.3
現場が自ら動き出す!「動かせるKGI」の設計図:因果とリズムの目標管理術
採用の成功は、募集段階における定義の精度に依存します。
本稿は、経営者および人事責任者が明日から実践できるフレームワークとして、ペルソナ設計(Must/Plus/Anti)、期待役割の言語化(What/Scope/How/Timeline)、および評価基準の標準化(必須・加点・減点 × SBI+課題)を統合する方法を提示します。

「経験豊富で自走できる人がほしい」「カルチャーフィットする人を採りたい」――多くの企業がこのような言葉を掲げて採用に臨みます。しかし、これらの表現が曖昧なままでは、面接官や現場と人事の間で期待が食い違い、採用後に「期待と実際が違った」といった問題が生じます。
採用の失敗を防ぐためには、募集段階で「誰を、何のために、どう見極めるか」を明確にしておくことが不可欠です。具体的には、以下の三点を同時に設計します。
ペルソナ(どんな人) × 期待役割(何を成す) × 評価基準(どう測る)
この三点を一枚のスコアカードに統合して運用することで、採用の再現性と入社後の立ち上がり速度を高めることができます。

ペルソナ設計は「どのような人物像が組織で機能するか」を示す作業です。ここで推奨するのは、Must(必須)/Plus(加点)/Anti(除外)の三層で要件を整理する方法です。
例:関連領域での実務経験、主要ツールの運用スキル。
例:近接業界の理解、データ分析の素地。
例:協働を回避しがちな個人最適志向。
精度の高いペルソナを作るには、次の3つの情報を参照します。
例示書き方:
求人票の「歓迎要件」をMust/Plus/Antiに再整理し、各項目に「なぜ必要か」を1行追記することにより、選考基準に関する共通理解が生まれます。
業務の羅列ではなく、当該ポジションが達成すべき成果(What)を軸に定義することで、候補者・採用側・現場の認識を一致させることができます。期待役割は、以下の4項目で構造化します。
実践の第一歩:募集ポジションごとに1ページの90日ロードマップを作成し、面接前に現場責任者と合意を取ること。

面接官の印象に左右されない評価プロセスを設計するために、評価は必須・加点・減点の三層に整理します。これらをSBI質問および課題選考で裏取りすることで、判断の再現性が高まります。
SBIは、候補者の行動の再現性を評価するための有効な手法です。
「直近の売上低迷に際して、どのような状況で、どのような行動を取り、どのような影響がありましたか?」
この問いにより、候補者が取った具体的行動と、その結果がどの程度再現可能であるかを判断できます。
各評価項目は5段階評価に重み付けを行い、必須項目は合否の分岐基準とします。加点は優先順位付けに、減点は早期リスクの兆候として扱います。さらに、面接官による採点コメントは必ずSBI形式で記述することを運用ルールとしてください。
実践の第一歩:面接台本を「必須1問・加点1問・SBI3問」で統一し、評価シートを面接官全員に共有すること。
ペルソナ、期待役割、評価基準を別々に管理している組織では、プロセス間の齟齬が生じやすくなります。役割スコアカードはこれら三点を一枚にまとめることで、採用からオンボーディング、評価までを一貫した尺度で運用できるようにするツールです。
各フェーズでの活用イメージは以下の通りです。
採用時に交わした「期待値」と入社後に確認する「実績」を同一のフォーマットで管理することにより、評価の整合性が高まります。
実践の第一歩:今期の重点ポジションから試験導入し、求人広報・選考・オンボーディング各プロセスへ実装してください。
要点を改めて整理します。
派手な施策ではありませんが、「同じ前提・同じ指標・同じ言葉」が揃ったとき、採用のミスマッチは確実に減少し、入社後の立ち上がりは大幅に改善します。読了後の最初の1時間で、まずは求人票と面接台本の更新に着手してください。その小さな一歩が、採用の再現性を高める重要な起点となります。