&GROW LP

TOP &GROWアカデミー コラム ハラスメント相談・予防とコンプライアンス対応

ハラスメント相談・予防とコンプライアンス対応

2025.09.18

近年、企業において「ハラスメント対策」は避けて通れない課題となっています。パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントだけでなく、マタニティハラスメント、アルコールハラスメントなど、対象は広がり続けています。ハラスメントが放置されると、社員の心身に深刻な影響を及ぼすだけでなく、離職や訴訟、企業の信用失墜といった重大なリスクに直結します。
さらに、労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)によって、企業にはハラスメント防止措置を講じる法的義務が課されています。これは単なる「モラルの問題」ではなく、コンプライアンス対応そのものです。

ハラスメントの種類とリスク

まずは組織として、どのような行為がハラスメントにあたるのかを明確にする必要があります。

  • パワーハラスメント(職場での優位性を背景にした言動)
    例:人格を否定する発言、過大な業務の強制、無視や排除
  • セクシュアルハラスメント
    例:性的な冗談や発言、不必要な身体的接触、恋愛関係の強要
  • マタニティハラスメント
    例:妊娠・出産・育児休業を理由とする不利益な取り扱い
  • その他(モラハラ・アルハラ・カスハラなど)
    顧客や取引先からの不当な要求も「カスタマーハラスメント」として注目されています。

これらを放置すれば、社員のメンタル不調や退職、ひいては労働紛争や裁判に発展しかねません。つまり、ハラスメント対策=リスクマネジメントでもあります。

相談体制の整備

ハラスメント防止には「相談しやすい窓口」が不可欠です。社員が安心して声を上げられる仕組みを整えることが、初動対応の鍵になります。

  • 相談窓口の複数設置
    上司が加害者となるケースもあるため、人事部門や外部窓口など複数の選択肢が必要です。
  • 匿名相談の導入
    匿名性を担保することで、社員が不安なく声を届けられるようにします。
  • 相談者の不利益取扱い禁止
    通報者を守るルールを明示し、報復を防止します。

予防のための教育・啓発

ハラスメントは「知らないうちに加害者になる」リスクが大きいものです。そこで、社員全員への教育が欠かせません。

  • 管理職研修
    部下指導との線引き、言葉遣いや態度の注意点を具体例で学ぶ。
  • 全社員研修
    ハラスメントの定義や事例を理解し、日常的に配慮する意識を育てる。
  • ポリシーの明文化
    「ハラスメントは許さない」という企業姿勢を就業規則や行動規範に盛り込み、周知徹底する。

コンプライアンス対応のポイント

法的義務を果たし、組織の信頼を守るためには、次の対応が求められます。

  1. 方針の策定と公表
     ハラスメント防止の基本方針を明文化し、社内外に示す。
  2. 体制整備
     相談窓口の設置、外部専門機関との連携。
  3. 迅速な調査と対応
     相談があれば速やかに事実関係を調査し、公平・適切に対応する。
  4. 再発防止策
     加害者への指導、職場環境の改善策を講じる。
  5. 記録の保存
     相談・調査・対応のプロセスを記録として残し、透明性を確保する。

信頼される組織文化をつくる

最終的に重要なのは「予防と対応を形式的に行うこと」ではなく、社員が安心して働ける心理的安全性の高い職場文化を醸成することです。

  • 日常的な1on1や面談で部下の声を拾う
  • 経営層が率先して「ハラスメントゼロ」を発信する
  • 相談があった際に誠実かつ迅速に対応する

こうした積み重ねが、社員からの信頼を生み、ひいては企業の持続的成長を支える基盤になります。

  • この記事をシェアする
  • facebook
  • twitter