2025.12.3
現場が自ら動き出す!「動かせるKGI」の設計図:因果とリズムの目標管理術
「求人広告を出しているのに、なかなか応募が来ない」「面接までたどり着いても、内定を辞退されてしまう」──。このような悩みを抱えている経営者や人事担当者は少なくありません。少子高齢化が進み、労働力人口が減少する現代において、人材確保は企業の存続を左右する喫緊の課題となっています。
これまでの採用活動は、まるで「待ちの姿勢」でした。求人広告を出し、応募者が来るのをひたすら待つ。しかし、情報が溢れる現代では、求職者側も企業を「選ぶ」時代です。企業は、自社の魅力を能動的に発信し、共感してくれる人を探しに行く「攻めの採用」へとシフトしなければなりません。
本記事では、この「攻めの採用」を「採用マーケティング」という視点から体系的に解説します。単なる求人広告のテクニックに留まらず、応募者を増やし、さらに定着させるための戦略を、経営者・採用担当者向けに具体的にご紹介します。

応募者を増やすための第一歩は、闇雲に広告を出すことではありません。まず、「誰に」「何を」伝えるかを明確に定義する戦略立案が不可欠です。
採用活動を「自社の魅力を伝え、共感する人を集める」というマーケティング活動と捉え直すことが出発点です。顧客を獲得するマーケティングと同様に、採用活動も「認知→興味→応募→選考→入社→定着」というファネル(じょうご)で考えることができます。
認知(Awareness): 会社の存在や募集があることを知ってもらう
興味(Interest): 会社や仕事に興味を持ってもらう
応募(Application): 実際に応募してもらう
選考(Selection): 面接を通じて双方の理解を深める
入社(Hiring): 入社を決めてもらう
定着(Retention): 入社後も長く活躍してもらう
このファネルの各段階で、どのようなコミュニケーションを取るべきか、どのようなコンテンツを用意すべきかを戦略的に考えることが、採用マーケティングの核心です。
求人広告を出す前に、「どのような人材に来てほしいか」を徹底的に言語化しましょう。単に「経験者」「営業スキル」といった表面的な条件だけでなく、「ペルソナ」として具体的に設定することが重要です。
ペルソナ設定の例:
年齢: 20代後半
現職: IT企業の法人営業職
スキル: SaaSツールの活用経験、顧客との関係構築力
価値観: 自身の成長を重視、新しいことに挑戦したい
悩み: 現職では裁量権がなく、ルーティンワークに物足りなさを感じている
ペルソナが明確になると、その人がどこにいて、どのような情報に興味を持つのかがわかります。現場の社員に「どんな人と一緒に働きたいか」をヒアリングし、具体的な人物像を複数作成することで、よりターゲットに響くメッセージを発信できるようになります。
応募者が増えない会社は、往々にして自社の「魅力」を言語化できていません。自社で働くことの価値や魅力を明確にし、求職者に伝える活動を「採用ブランディング」と呼びます。
「この会社で働くことで、どのような価値を得られるか?」**を言語化したものです。給与、福利厚生といった目に見える報酬だけでなく、キャリアアップの機会、仕事のやりがい、人間関係、社会貢献性といった要素も含まれます。
競合他社にはない「尖った魅力」を見つけることが、差別化の鍵となります。例えば、「新しい事業にどんどん挑戦できる風土」「社員のアイデアがすぐに形になる」といった独自の強みを見つけましょう。
「アットホームな職場です」という言葉は抽象的で響きません。社員がどのような想いで仕事に取り組んでいるか、どのような雰囲気で働いているかを、写真や動画、社員インタビューを通じて具体的に見せることが重要です。

戦略が固まったら、いよいよ具体的な施策に移ります。ペルソナに響くメッセージを、最適なチャネルで発信していきましょう。
求人媒体の掲載は、多くの企業が取り組んでいることです。しかし、その内容を少し工夫するだけで、応募率は大きく変わります。
求職者はタイトルを見てクリックするかどうかを判断します。「【未経験歓迎】」や「【リモートOK】」といったキーワードと、「会社の未来を創るWebマーケター募集」といったキャッチーな言葉を組み合わせましょう。
仕事内容を「タスク」ではなく「ミッション」として伝えます。「顧客データを分析する」ではなく、「顧客の課題をデータから見つけ出し、ビジネスの成長を支援する」というように、仕事の目的や意義を伝えます。
職場の雰囲気、社員の表情、オフィス風景などを写真や動画で伝えることで、求職者は「働くイメージ」を具体的に持つことができます。文字だけでは伝わらない会社の魅力が、視覚的に伝わるように工夫しましょう。
転職意欲の低い「潜在層」にアプローチする手法も重要です。
LinkedInなどのビジネスSNSや、スカウトサービスを利用し、企業側から直接求職者にアプローチする手法です。企業の魅力をピンポイントで伝えることで、転職を考えていなかった優秀な人材に興味を持ってもらうことができます。
X(旧Twitter)やFacebookなどのSNSを、採用活動に活用する手法です。採用担当者が個人のアカウントで日々の業務内容や会社の雰囲気を発信することで、親近感や信頼感が生まれ、求職者との接点が増えます。
コストを抑え、質の高い人材を獲得できる手法として注目されているのが、リファラル採用とオウンドメディアです。
社員の知人・友人を紹介してもらう採用手法です。社員は自社のことをよく理解しているため、マッチング精度が高く、入社後の定着率も高い傾向にあります。社員へのインセンティブ制度などを導入することで、促進できます。
自社で運営するブログや採用サイトを通じて、企業の魅力を継続的に発信します。社員インタビュー記事、プロジェクトの裏側、働き方や福利厚生の紹介など、様々なコンテンツを定期的に更新することで、会社のファンを増やし、未来の応募者を生み出す仕組みを作ることができます。

応募者を増やすことはあくまで「手段」であり、その先にある「入社後の活躍」こそが「採用成功」です。
応募者が「この会社は丁寧だ」「この会社で働きたい」と感じるような体験を提供しましょう。
応募者からの問い合わせや、選考結果の連絡は迅速に行います。
面接は、企業が一方的に応募者を見極める場ではありません。応募者にとっても、その会社が自分に合っているかを見極める場です。一方的な質問攻めではなく、対話を通じてお互いの理解を深めましょう。
不採用の場合も、丁寧なフィードバックを心掛けることで、会社の評判を落とさずに済みます。
面接官は、会社の「顔」です。彼らの対応一つで、応募者の入社意欲は大きく左右されます。
面接官は会社の魅力を伝え、応募者の入社意欲を高める役割も担っていることを理解する必要があります。
応募者のスキルや人柄を見極めるだけでなく、当社のビジョンや仕事の面白さを伝え、入社後のキャリアパスを具体的に示すことで、動機づけを行いましょう。
また、面接官によって評価基準がバラバラにならないよう、事前にトレーニングを行い、評価軸を統一してください。
内定を出したら終わりではありません。入社までの期間と入社後も、継続的なサポートが必要です。
定期的な連絡や内定者同士の交流会などを開催し、入社への期待感を維持させます。
入社後のスムーズな立ち上がりを支援するプロセスです。OJT担当者の選定、メンター制度の導入、定期的な1on1ミーティングなどを通じて、新入社員が早期に戦力化し、定着できるようサポートします。
応募者を集めるための採用活動は、単なる人事部の仕事ではありません。それは、自社の未来を創る人材を確保するための経営戦略そのものです。
採用市場が厳しさを増す現代において、「応募者が来ない」という事実は、会社の魅力が伝わっていない、あるいは伝えるための「仕組み」が不足していることを示しています。応募者を増やすことは、あくまでその課題を解決するための「手段」です。
「どのような人材に来てほしいか」を明確にし、その人材に響くメッセージを「伝える仕組み」を構築し、入社後も活躍してもらうための「土壌」を整える。この一連のプロセスこそが、採用マーケティングの真髄であり、「企業の未来への投資」なのです。
この記事を読んで、何か一つでも「これならできそうだ」と感じたことはありましたか?最初からすべての施策を完璧に実施する必要はありません。まずは、小さな一歩から始めてみましょう。
この行動が、あなたの会社の未来を切り開く第一歩となるはずです。