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TOP &GROWアカデミー コラム 経営者が知るべきOJT成功のポイント〜即戦力を育てるための戦略的アプローチ〜

経営者が知るべきOJT成功のポイント〜即戦力を育てるための戦略的アプローチ〜

2025.09.18

現代のビジネス環境は、かつてないほどのスピードで変化しています。少子高齢化による労働人口の減少は深刻な問題であり、人材の確保は多くの企業にとって最重要課題となっています。また、働き方改革やリモートワークの普及により、従業員の働き方や価値観も多様化しています。

このような状況下で、企業が持続的な成長を遂げるためには、入社した人材をいかに早く、そして確実に「即戦力」に育てるかが、企業の命運を握ると言っても過言ではありません。

旧来のOJT(On-the-Job Training)は、「見て覚えろ」「背中を見て学べ」といった非効率的で属人的な指導が主流でした。しかし、このようなやり方では、新人の早期離職に繋がったり、成長にばらつきが出たりする弊害が顕著になっています。

本記事では、OJTを単なる新入社員教育の一環としてではなく、組織全体の成長を加速させるための戦略的投資として捉え直すことを提案します。OJTを成功させるための具体的な土台作りから、実践的なステップ、そして成功事例まで、経営者が知っておくべきポイントを網羅的に解説します。

OJT成功の土台作り〜「人」と「仕組み」を整える〜

OJTの成功は、現場のトレーナー個人のスキルに依存するものではありません。経営者や組織全体がOJTの重要性を理解し、成功するための土台をしっかりと構築することが不可欠です。

OJTを始める前に経営者がすべきこと

OJTを始める前に、経営者には3つの重要な役割があります。

OJTを組織の最重要課題と位置付ける

多くの企業では、OJTは現場の業務に追われながら片手間に実施されることが少なくありません。
経営者がOJTを最優先事項として位置づけ、十分なリソース(時間、予算、人員)を配分することが、成功の第一歩です。
社内でのOJTに対する意識を高めるために、全社的な研修や経営トップからのメッセージ発信も有効です。

OJTトレーナーの「選定」と「育成」

OJTトレーナーは、単に業務に詳しい人が適任というわけではありません。
新人の成長を心から願う「教育マインド」と、部下の話に耳を傾ける「傾聴力」が求められます。
経営者は、トレーナーの育成に積極的に投資すべきです。コーチングスキルやフィードバックスキルを学ぶ研修を提供し、彼らが自信を持ってOJTに臨めるようにサポートしましょう。

明確な「ゴール」と「評価基準」の設定

「即戦力」という言葉は曖昧です。OJTを通じて、新人にどのようなスキルや知識を身につけてほしいのか、具体的に言語化する必要があります。
「3ヶ月後には、顧客への提案資料を一人で作成できる」といった具体的な目標を設定し、それを達成するための評価基準を明確にすることで、トレーナーと新人の双方がゴールに向かって迷いなく進むことができます。

「学習」を促すための環境整備

OJTを効果的にするためには、新人自身が自律的に学習できる環境を整えることが重要です。

心理的安全性の確保

新人が「こんな初歩的なことを聞いても大丈夫かな…」と躊躇してしまうような環境では、OJTは成功しません。
「心理的安全性」の高いチームでは、メンバーは失敗を恐れずに挑戦し、自由に質問や意見を交わすことができます。
トレーナーは、新人の質問を歓迎し、「良い質問だね」とポジティブなフィードバックを返すことで、安心感を醸成しましょう。

情報共有の仕組み

必要な情報が特定の個人に属人化していると、OJTは滞ってしまいます。
業務マニュアルやノウハウをまとめた社内wiki、過去の成功事例や失敗事例を共有するデータベースなど、必要な情報に誰もがアクセスできる仕組みを構築しましょう。
SlackやTeamsなどのコミュニケーションツールを活用して、ナレッジを蓄積・共有することも有効です。

多角的なフィードバックシステム

フィードバックは、新人の成長に欠かせない要素です。
トレーナーだけでなく、チームの他のメンバーからもフィードバックをもらえる「メンター制度」や、同期間で互いにフィードバックし合う「ピアレビュー」を導入することで、新人は多角的な視点から自分の成長を客観的に見つめることができます。

実践編〜OJTを成功に導く具体的なステップ〜

OJTは、導入期、成長期、自走期の3つのステップに分けて、それぞれの段階で適切なアプローチを取ることが重要です。

【ステップ1】導入期:安心と信頼を築く

入社して間もない時期は、新人が最も不安を感じやすい時期です。この時期は、安心感と信頼関係を築くことに注力します。

オリエンテーションの工夫

会社の方針や事業内容だけでなく、会社の歴史や文化、働く人々の想い、ビジョンを丁寧に伝えましょう。
創業者や経営トップが直接メッセージを伝える機会を設けることで、新人は会社に対するエンゲージメントを高めることができます。

「ウェルカムバディ」制度

OJTトレーナーとは別に、気軽にランチに行ったり、業務外の相談に乗ったりできる「ウェルカムバディ」を付けることをお勧めします。
トレーナーには聞きにくいような些細な疑問や不安を解消できる存在がいることで、新人は会社に早く馴染むことができます。

最初の仕事は「小さく成功」させる

新人にいきなり大きな仕事を任せるのではなく、達成しやすい「スモールステップ」のタスクを与えましょう。
小さな成功体験を積み重ねることで、新人は自信をつけ、次のステップに進むモチベーションを得ることができます。

【ステップ2】成長期:自律性を引き出す

導入期で安心と信頼を築けたら、次は新人の自律性を引き出すフェーズに入ります。

「ティーチング」から「コーチング」へ

一方的に答えを教える「ティーチング」から、新人に問いかけ、自ら考えさせる「コーチング」へとシフトします。
「この仕事の目的は何だと思う?」「もし自分が担当者なら、どう進める?」といった問いかけを通じて、新人の思考力を養います。

適切な「権限委譲」

新人のスキルレベルに合わせて、徐々に裁量と責任のある仕事を任せましょう。
「この仕事はあなたに任せる。何かあればいつでも相談してね」と伝え、新人を信頼していることを示すことで、彼らは当事者意識を持って仕事に取り組むようになります。

定期的な1on1ミーティング

週に1回、30分程度の1on1ミーティングを定期的に実施しましょう。
1on1では、業務の進捗確認だけでなく、新人が抱えている課題や悩み、キャリアの相談にも耳を傾けることが大切です。

【ステップ3】自走期:一人前へと育てる

OJTの最終段階では、新人が自立した社員として活躍できるように後押しします。

評価とフィードバックの透明化

評価面談では、「なぜその評価になったのか」を明確に伝えましょう。
「もっと頑張りなさい」といった抽象的な言葉ではなく、「〇〇のプロジェクトで、顧客の課題を深くヒアリングしたことで、より良い提案に繋がったね」といった具体的な行動に焦点を当てたフィードバックを心がけましょう。

役割の拡大と新たな挑戦

成長した新人に、新人指導や新しいプロジェクトのリーダーなど、責任のある仕事を任せましょう。
新たな挑戦は、彼らのさらなる成長を促し、組織の活性化にも繋がります。

OJT卒業後のフォローアップ

OJTが終了しても、新人の成長は終わりません。
継続的な学習機会(社外研修、資格取得支援など)を提供し、定期的にキャリアプランについて話し合う機会を設けることで、長期的な人材育成に繋げることができます。

事例研究〜OJTで即戦力を育てた企業〜

事例A:マニュアルにないホスピタリティをOJTで伝授

A社は、顧客満足度を最重要視するサービス業。マニュアル通りではない、顧客一人ひとりに寄り添う「ホスピタリティ」を新人にも身につけさせる必要がありました。
OJTでは、トレーナーが新人と共に現場に立ち、「なぜ今、この行動が必要なのか?」を問いかけながら実践的な指導を行いました。
また、月に一度のミーティングで、新人たちが顧客との感動的なエピソードを共有する時間を設けることで、ホスピタリティの本質を言語化し、組織全体に浸透させました。

事例B:IT企業のリモート環境下で効果的なOJTを実施した事例

B社は、コロナ禍で完全リモートワークに移行し、OJTの実施が困難になりました。
そこで、OJTを「仕組み化」しました。新入社員用のオンライン研修プラットフォームを構築し、業務に必要な知識やスキルを動画でいつでも学べるようにしました。
また、毎朝15分の「チーム朝会」で、OJTトレーナーと新人が顔を合わせ、進捗や困りごとを共有。さらに、週に一度はオンラインで1on1を実施することで、新人のメンタルケアにも配慮しました。

事例C:中小製造業の熟練工の技術継承をOJTで成功させた事例

中小企業C社では、長年の経験を持つ熟練工の技術が属人化しており、後継者育成が課題でした。
OJTでは、熟練工に「技術を言語化する」研修を実施。彼らが当たり前だと思っていた技術を、新人にも分かりやすいようにマニュアル化しました。
また、熟練工と新人がペアを組み、「なぜこのやり方をするのか」を対話しながら技術を伝承する「職人OJT」を導入。結果、若手社員の技術習得スピードが飛躍的に向上しました。

OJTは「企業文化」そのものである

OJTは、単に新入社員に仕事を教える行為ではありません。それは、あなたの会社の文化や価値観を伝え、組織全体に学習と成長の文化を根付かせるための活動です。

成功するOJTに共通する3つの要素

経営陣のコミットメント: OJTを最重要課題と位置づけ、十分なリソースを投資する。
トレーナーの育成: トレーナーに適切な研修とサポートを提供し、彼らの教育スキルを高める。
継続的な改善: OJTのプロセスを定期的に見直し、PDCAサイクルを回す。

OJTを通じて、新人は即戦力へと育つだけでなく、トレーナーも指導者として成長し、組織全体の活性化に繋がります。

OJT変革の第一歩を踏み出そう

この記事を読んで、あなたはどのようなOJT変革の第一歩を踏み出したいと思いましたか?
「まずは、OJTトレーナー向けの勉強会を開いてみよう」「新人用のウェルカムバディ制度を導入してみよう」など、できることから少しずつ始めてみてください。あなたの小さな一歩が、きっと会社の未来を変える大きな力となるはずです。
もし、OJTに関してさらに詳しく知りたいことや、具体的な課題があれば、いつでもお気軽にご相談ください。

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